雨季の雨はシャワーのようで、少し経つと止む。遠くの空で、雨のカーテンが見える。ものすごい積乱雲。それと雷。一瞬にして家の前の道は川となって、自転車でも靴がびしょびしょになる。ある日本人は、カンボジア人に教えられたそうだ。
「今日は雨が降るの?」
「音を聞いてみて。」
この会話が分かるだろうか。
雨音が近づいてくることが、耳を澄ませば聞こえる時があるそうなのだ。雨を聞く。綺麗な言葉。
いつも自転車で僕のパソコン授業に通う生徒が、ある日HONDAのポンコツバイクで来た。うれしくなる。ほんとに安いポンコツバイクだけど、それはカンボジア人にとって歴然な違い。カンボジア人の中で、お金を持っているのかを判断するのは容易で、バイクの種類。これはかなり精度が高い。彼女もバイクに乗れるようになったかぁと、ふむふむとなる。
授業は終わって、彼女がエンジンをかけようとすると、エンジンがかからない。エンストかと思ってガソリンを入れたけど、つかない。パソコンは修理できるんだからと、私を見るけどバイクは無理だと言ったら本当に悲しそうな顔をする。バッテリーだろうと、僕もすげぇ走ったけど付かない。
馬鹿な僕は「バイクの修理屋は近くにありますか?」って聞いてしまった。修理する金があったら、とっくに諦めてバイクを押してるのに。僕達の前をSUZUKI最新のバイクが走る。どこかの賄賂を一杯もらっているアホな役人が車で通る。バイク修理を教えている先生を必死で探したけど、今日は学校をサボっているらしい。
彼女がエンジンを何回もかけようとしている時、SUZUKI最新のバイクや役人の車をどう思うのだろう。
その友達は、さりげなく自分の財布を確認していた。